当院のむし歯治療の取り組み
むし歯は自然に治ることがないため、適切な治療が必要です。しかし、歯は削るほど弱くなり、何度も治療を繰り返すと、いずれ抜歯が必要になることもあります。そこで当院では、できるだけ削る範囲を最小限に抑え、健康な歯を残すことを重視しています。
また、痛みに配慮した治療を行い、できる限り負担を少なくするよう心がけています。大切な歯を守るために、気になることがあればお早めにご相談ください。
痛みに配慮した治療
表面麻酔
電動麻酔
歯科治療において患者様が最も不安を感じるのが「痛み」です。その多くは麻酔時に発生します。当院では、まず表面麻酔を施し、歯ぐきを十分に麻痺させた後に麻酔注射を行うため、針を刺す際の痛みをほとんど感じません。
さらに、使用する針は極細のものを選び、刺激を最小限に抑えています。麻酔液の注入速度も痛みの要因となるため、当院では電動麻酔器を使用し、一定の速度でゆっくりと注入することで痛みを軽減する工夫をしています。
可能な限り削らない・抜かない治療
当院では、健康な歯をできるだけ残すために、マイクロスコープやルーペ(拡大鏡)を使用した精密な治療を行っています。拡大視野で細部まで確認できるため、削る範囲を最小限に抑え、より確実で安全な治療が可能です。
マイクロスコープを活用することで、肉眼では見えない細かい部分まで把握でき、従来の経験や感覚に頼らず精密な処置を行えます。さらに、小さなむし歯も早期に発見でき、軽度な治療で済ませられるため、歯の寿命を延ばすことにもつながります。
むし歯とは
むし歯は、口腔内の細菌が糖を分解して酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かすことで進行する病気です。特に「ミュータンス菌」と呼ばれる細菌が大きく関与しており、食事の後に歯垢を形成し、そこから酸を産生します。この酸が歯の表面を溶かし続けることで、むし歯が発生するのです。
しかし、食後すぐに口をすすぐ、正しい方法で歯磨きを行うなどの習慣をつけることで、酸の影響を減らし、むし歯を予防することができます。むし歯は一度できてしまうと治療が必要になるため、何よりも「予防」が重要です。
むし歯が放置しても治りません
初期のむし歯であれば、再石灰化によって進行を抑えられることもありますが、一度象牙質まで達してしまうと自然に治ることはありません。むし歯が進行すると、やがて神経に達し、強い痛みを伴うようになります。さらに放置すると、歯根まで感染が広がり、最終的には抜歯が必要になることもあります。
むし歯の進行度はC1(エナメル質のむし歯)からC4(歯根まで達したむし歯)まで分類され、数字が大きくなるほど治療の負担も大きくなります。定期的な歯科検診を受けることで、むし歯を早期に発見し、最小限の治療で済ませることができます。毎日の丁寧な歯磨きと、定期的なプロフェッショナルケアが、健康な歯を維持するために不可欠です。
むし歯の進行と治療法
CO(むし歯の前兆)の症状・治療法
むし歯が本格的に進行する前の「要観察歯」と呼ばれる段階です。この時点で適切なケアを行えば、進行を食い止めることができます。しかし、痛みや違和感がほとんどないため、自分で気づくことは難しく、定期的な歯科検診が重要になります。
歯の表面ではカルシウムが少しずつ溶け始め、白濁した部分が現れることがありますが、まだ穴は開いていません。痛みなどの自覚症状はほとんどないため、早期発見のためには歯科医院でのチェックが必要です。
治療法
治療法としては、歯科医院でフッ素塗布を行い、エナメル質の再石灰化を促します。また、日常のケアとしてフッ素入りの歯磨き粉を使用し、丁寧なブラッシングを続けることで、むし歯の進行を防ぐことができます。
C1(初期のむし歯)の症状・治療法
エナメル質が溶け始め、むし歯が目に見える形になりつつある状態です。まだ痛みを感じることはほとんどありませんが、小さな穴ができたり、歯が灰色や薄茶色に変色したりすることがあります。
治療法
この段階では、治療も比較的簡単で、必要最小限の処置で済みます。むし歯部分を削り、コンポジットレジンと呼ばれる白い樹脂の詰め物をして修復します。保険適用の治療が可能であり、短期間で治療を終えることができるため、早めの処置が理想的です。
C2(本格的に進行し始めたむし歯)の症状・治療法
むし歯がエナメル質を越えて象牙質まで達した状態です。象牙質はエナメル質よりも柔らかく、細菌の進行が一気に加速します。この段階になると、冷たいものや甘いものがしみるようになり、痛みを感じ始める人も増えます。さらに、むし歯が黒くなり、穴が大きくなっていくことも特徴です。
治療法
治療法としては、むし歯に侵された部分を削り、詰め物(インレー修復)や被せ物(クラウン)を行います。詰め物の素材には、保険適用の金属(メタル)や、自費診療で選べる白いセラミックやジルコニアがあります。むし歯がC2まで進行すると、治療の範囲が広がるため、できるだけ早めの受診が大切です。
C3(神経まで進行したむし歯)の症状・治療法
むし歯が歯の神経(歯髄)にまで達すると、激しい痛みを伴うようになります。冷たいものや温かいものがしみるだけでなく、何もしなくてもズキズキと痛むようになり、強い口臭が発生することもあります。さらに、歯に大きな穴が開いたり、一部が欠けたりすることもあります。
治療法
この段階では、単なる詰め物では済まないため、まず「根管治療(歯の神経の治療)」が必要になります。感染した神経を取り除き、歯の根の内部をしっかり消毒したうえで、薬剤を詰めて密封します。その後、歯を補強するために土台を作り、被せ物(クラウン)で修復します。C3のむし歯は放置するとさらに悪化し、抜歯が必要になるため、早急な治療が求められます。
C4(ほとんど歯がないむし歯)の症状・治療法
むし歯が歯全体を侵し、歯のほとんどが失われた状態です。神経が完全に侵されると、痛みを感じなくなることもありますが、これは「歯が死んでしまった」状態を意味し、決して良い兆候ではありません。強い口臭を伴い、周囲の歯や顎の骨にも悪影響を及ぼす可能性があります。
歯の神経までむし歯が達してしまった場合
むし歯が進行し、神経(歯髄)まで達してしまった場合、まずマイクロスコープを用いて歯の神経の状態を詳しく確認します。感染がごく一部にとどまり、健康な神経を大部分残せる場合は「歯髄温存療法」を行い、可能な限り歯の神経を温存します。
一方で、感染が神経の大部分に広がってしまっている場合は、根管治療(抜髄)が必要になります。神経を残せるかどうかは、むし歯の進行度や患者様の症状を慎重に診断した上で判断します。
歯髄温存療法
通常、むし歯が神経に達した場合(C3)、感染を完全に取り除くために歯の神経を抜く「抜髄」という治療が行われます。しかし、神経の損傷が軽度で、自覚症状も少ない場合には、神経を温存する「歯髄温存療法」を選択することが可能です。MTAセメントやバイオセラミック材料を使用し、神経が露出した部分を保護しながら封鎖します。
歯髄温存療法のメリット
歯が割れにくくなる
神経を保存することには、大きなメリットがあります。
まず、歯が割れにくくなるという点です。根管治療では、感染した神経を除去した後、内部の歯質を削る必要があるため、歯の強度が低下し、割れやすくなります。研究では、前歯で1.8倍、奥歯では7.4倍も割れやすくなるとされています。一方、歯髄保存療法では、内部の歯質を削る量を最小限に抑えることができるため、歯の寿命を長く保つことが可能になります。
歯の上部を削る量を最小限にできる
根管治療を行った後は、歯を全周削って被せ物(クラウン)を装着することが一般的ですが、歯髄保存療法を選択できる場合は、削る量の少ない詰め物(インレーやレジン修復)での対応が可能です。歯は削るほど寿命が短くなるため、削る量を少なく抑えられることは、歯の健康維持にとって大きなメリットとなります。
定期検診でむし歯を予防しましょう
むし歯は早期発見・早期治療が大切です。早い段階で見つけることができれば、治療にかかる時間や痛みを抑え、費用の負担も軽減できます。
むし歯が進行して神経が死んでしまうと、歯を残せる可能性が大幅に低くなります。痛みや違和感を感じたら、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
当院では、患者様の大切な歯を守るため、定期的なクリーニングやメンテナンスを推奨しています。毎日のセルフケアと、プロフェッショナルケアを組み合わせることで、むし歯の予防効果を最大限に高めることができます。健康な歯を維持するためにも、定期検診を受け、むし歯のない口腔環境を維持していきましょう。